森のメヌエット2

あたたかなお日さまの光を

からだいっぱいにあびて

小さな芽は

ぐんぐん大きくなっていきました。


枝をのばし

つややかな緑色の葉を

お日さまにむかって

力いっぱいひろげて

大きくなっていきました。


もう

リスもウサギもとびこせません。


少年になった若い木は

いろんなことに気がつくようになりました。


ひると夜があって


ひるまのお日さまがいなくなると

空は濃いブルーになり


チカチカとまたたく

たくさんの光―お星さまが

見えてくること


空にうかぶ青白いお月さまは


まるくなったり

やせてほそくなったり


毎日少しずつ

形が変わっていくこと


空を流れていく雲は


じつにいろんな形をしていて

同じ形には二度とならないこと―


小さな若い木は

森がすてきな音楽を

かなでていることにも

気がつきました。


小鳥のさえずりは

かわいいピッコロの音


きつつきは

くちばしで木の幹を

トントンたたいて

小太鼓のような音をたてます。


さわさわと風にゆれる

かしの木の葉は

バイオリンのようですし


小さな木のすぐそばにある

小さな池は

ハープのねいろを

ひびかせながら

きれいなさざなみをたてます。


そうした音が

いくつも重なりあうと

それはとても心地よい

ハーモニーになり


小さな若い木は

うっとりと

ききほれるのでした。


ある日

若い木は


セロのような

低いしずかな

けれどとてもあたたかいひびきの

ねいろをききました。


みまわすと

それはすぐそばに立っていた

古い大きな柳の木のおじいさんでした。


それは心にしみるような


なにかたまらなく

なつかしくなるようなしらべでした。


*次回 森のメヌエット3につづきます。

(作 藤城清治 お話 香山多佳子    1991年12月、1992年1月 暮らしの手帖より)

藤城清治の世界

こびとはぼくの分身だ。 ぼくはこびとを通して夢を語る。

0コメント

  • 1000 / 1000